なぜそうなるか
着物を売るつもりで呼んだ買取業者に、貴金属を求められたら?——国民生活センターには「和服の買い取りのはずが貴金属を買い取られた」という相談が寄せられています
箪笥の奥に、何年も袖を通していない着物が何枚も眠っている家は少なくありません。母や祖母から受け継いだものの、手入れもできず、置き場所だけを取っているという話もよく聞きます。
処分するには惜しいけれど、自分で着る予定はない。そんなとき、自宅まで見に来てくれる買取業者に頼もうと考えるのは自然な流れです。
着物は重く、かさばります。店まで運ばずに済むなら、それに越したことはありません。
一方で、家に人を上げて品物を見せるとなると、店頭で売るのとは違う心配も出てきます。話が思わぬ方向に進んだとき、その場で断り切れるだろうか、という心配です。
国民生活センターの相談件数のページを開くと、この心配は実際の相談として積み上がっていました。着物そのものの値段ではなく、着物をきっかけに始まった話のほうが、相談の中心にあります。
そこで、国民生活センターの「訪問購入」の相談件数ページ、見守り新鮮情報、2023年の報道発表とその報告書を読み、事例とセンターの助言を並べました。特定の買取業者を選ぶための記事ではなく、着物の買取価格の相場も扱いません。
・和服などを売るはずが、貴金属まで買い取られたという相談が、国民生活センターの訪問購入のページに挙がっている
・2022年度の訪問購入の相談で、和服は商品別の3位(495件)だった
・センターは、訪問を約束していても、事前に承諾していない物品の売却を求めることはできないと書いている
・事前に業者の名称と買い取ってもらう物品の対象を確かめるよう勧めている
・困ったときの窓口として、消費者ホットライン188を挙げている
着物の買取で、どんな相談が寄せられているの?
着物を売るだけのつもりなのに、何が問題になるの?
国民生活センターの「各種相談の件数や傾向」には、自宅に購入業者が来て物品を買い取る「訪問購入」のページがあります。その冒頭の一文が、次のものです。
相談の中心は、売るつもりで用意した品物ではなく、途中で話に出てきた貴金属のほうにあります。「不用品や和服の買い取りのはずが貴金属を買い取られた」といった相談が寄せられています。
同じページの「最近の事例」には、洋服を出すつもりで来訪を承諾した人の相談が載っていました。
「不用品を引き取る」と電話があり、洋服を出そうと来訪を承諾した。来訪した担当者に「貴金属はあるか」「宝石はあるか」としつこく聞かれ、貴金属を強引に買い取られてしまった。
なお、このページは事例の扱いについて、注記を添えています。
※「最近の事例」は、相談者の申し出内容をもとにまとめたものです。
着物は、訪問購入の相談でどのくらい多いの?
2023年9月27日の報道発表の報告書には、2022年度の訪問購入の相談を商品別に並べた表があります(上位10位、全7,722件)。和服は495件で、アクセサリー、商品一般に次ぐ3位、全体の6.4%でした。同じ表の1位はアクセサリーの1,575件です。和服は、四輪自動車や靴よりも上に並んでいます。
報告書は、この表の相談に特商法の訪問購入に当たらないものも含まれる、と注記しています。数字は「着物をめぐる訪問購入のトラブルの件数」そのものではなく、相談の登録件数として読むものです。
相談の件数は、いまも続いているの?
訪問購入のページには、年度ごとの相談件数も載っています(2026年5月31日現在の登録分)。2023年度は8,623件、2024年度は7,909件、2025年度は7,523件でした。3つの年度とも、7千件を超える相談が登録されています。相談する人の年齢について、2023年の報道発表は次の特徴を示しました。
契約当事者が60歳以上の割合が全体の8割近くを占めているという特徴があり、特に高齢者に注意してほしいトラブルです。
呼ぶ前に、何を確かめておけばいいの?
業者を呼ぶ前に、できることはある?
2023年の報道発表は、アドバイスの1つに次の項目を挙げていました。
着物を売るのであれば、「着物の買い取り」として来てもらうことを、電話の段階ではっきりさせておくという読み方ができます。ただし、この助言が着物に限った書き方をしているわけではありません。事前に、購入業者の名称、買い取ってもらう物品の対象をしっかり確認しましょう。
当日、ほかの物を出すよう言われたら?
見守り新鮮情報 第466号の「ひとこと助言」は、事前に訪問を約束した場合について、こう書いています。
前もって電話等で訪問を約束した場合でも、購入業者は、消費者が事前に承諾していない物品の売却を求めることはできません。
同じ報道発表のアドバイスにも、断り方がそのまま書かれています。
買い取りの勧誘を承諾していない貴金属の売却を迫られたら、きっぱり断りましょう。
売ると決めたときは、何を見ればいい?
見守り新鮮情報は、売る場合に受け取るもの、確かめるものも挙げていました。
契約書を受け取り、品物の種類・買取価格・連絡先をその場で見る、という順番です。売却する場合は、必ず契約書を受け取り、すぐに物品の種類や買取価格、事業者の連絡先などを確認することが大切です。
この記事で確認したこと
・「不用品や和服の買い取りのはずが貴金属を買い取られた」といった相談がある(訪問購入のページ)
・2022年度の訪問購入の相談で、和服は商品別3位の495件(2023年報道発表の報告書)
・事前に承諾していない物品の売却を、購入業者は求めることができない(見守り新鮮情報 第466号)
・事前に業者の名称と買い取ってもらう物品の対象を確かめる(2023年報道発表)
・売るときは契約書を受け取り、物品の種類・買取価格・連絡先を確かめる(見守り新鮮情報 第466号)
着物を見てもらう前に、業者の名称と「何を見てもらうか」を電話の段階で決めておくと、当日ほかの物の話になったときに断る理由がはっきりします。迷ったときは、消費者ホットライン188で近くの消費生活センターにつないでもらえます。
よくある質問
着物の買取を頼んだら、ほかの物も見せないといけませんか
見守り新鮮情報 第466号は、前もって訪問を約束した場合でも、購入業者は消費者が事前に承諾していない物品の売却を求めることはできない、と書いています。ご自身の場面がこれに当たるかは、消費生活センターで確かめるのが確実です。
家族が一人で業者を呼んでいて心配です。家族から相談できますか
2023年の報道発表の「身近な高齢者を守るために」の節に、答えがそのまま載っています。
消費生活センター等への相談は、家族やホームヘルパー、地域包括支援センターなどの職員からでも可能です。
売ってしまった後に気が変わったら、取り消せますか
見守り新鮮情報 第466号によれば、訪問購入は条件を満たせばクーリング・オフができます。どんな条件で、いつまでできるかは、この記事では整理していません。お住まいの地域の消費生活センターにご相談ください。
この整理が変わる条件
- 国民生活センターが訪問購入のページや相談件数を更新した場合(件数は2026年5月31日現在の登録分)
- 国民生活センターが、着物や和服の買取について新しい注意喚起を出した場合
- 訪問購入に関する法令やルールが改められた場合
出典
- 国民生活センター「訪問購入(各種相談の件数や傾向)」 https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/doorstep_purchase.html
- 国民生活センター 見守り新鮮情報 第466号「貴金属の買い取りが目的!? 強引な訪問購入に注意」 https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen466.html
- 国民生活センター 報道発表「不用なお皿の買い取りのはずが、大切な貴金属も強引に買い取られた!-訪問購入のトラブルが増えています-」(2023年9月27日) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20230927_1.html
- 同 報告書本文(PDF) https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20230927_1.pdf
着物の買取を頼む前に、業者の名称と見てもらう物を決めておき、迷う点は消費者ホットライン188で相談してください。
当方が上の出典を引いて確かめた日: